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ナンテール大審裁判所第8部 2008年9月18日判決 第07/02173号
エリック・ラグージュ他5名対ブイグ・テレコム社事件
当事者名及び代理人名の表示(省略)
裁判所の構成及び口頭弁論期日の表示(省略)
事 案
事実
被告ブイグ・テレコム株式会社は2006年、ローヌ県タサン・ラ・ドゥミリューヌ町所在の原告らの住居に隣接し、樹木の形状をした高さ19メートルの塔上に携帯電話用中継アンテナ(本件設備)を設置した。
当事者の主張
2007年1月18日に被告に召喚状が送達された後、2008年1月11日に裁判所書記課に提出した最終申立書において、原告らは当裁判所に対し以下の請求を行った。
- 被告に対し、遅延1日当たり500ユーロの罰金強制(アストラント(astreinte))の下で、本件設備の撤去を命じること。
- 被告に対し、異常な近隣妨害(trouble anormal de voisinage)に基づき、以下の金額の支払いを命じること。
- 原告ラグージュ夫妻に対し、同人らの住宅の価値下落に対する損害賠償として20,000ユーロ、及び健康上のリスクにさらされたことに対する損害賠償として10,000ユーロ。
- 原告ラアロット夫妻に対し、同人らの住宅の価値下落に対する損害賠償として10,000ユーロ、及び健康上のリスクにさらされたことに対する損害賠償として10,000ユーロ。
- 原告グラヴィエ夫妻に対し、同人らの住宅の価値下落に対する損害賠償として10,000ユーロ、及び健康上のリスクにさらされたことに対する損害賠償として10,000ユーロ。
原告らは、その請求の根拠として、主として異常な近隣妨害の理論に依拠して主張を行っている。すなわち、本件アンテナの存在は、健康上のリスクにさらされること、及び、視界障害(trouble
visuel)による用益障害の存在が資産価値の喪失をもたらすことという2点において損害を与える障害(trouble dommageable)に該当するとした。
2008年2月27日に提出された申立書において、被告は当裁判所に対し、以下の請求を行った。
- 被告の設備は近隣妨害に該当しないとの判断を行うこと。
- したがって、原告らの請求をすべて棄却すること。
被告の主たる主張は以下の通りである。
- 原告らは、いかなる種類のいかなる病理(pathologie)をも訴えていないこと。
- 原告らは、健康に対するリスクの存在を何ら立証していないこと。
- 破毀院は、純然たる仮定的な損害(préjudice purement éventuel)を考慮することを拒否していること。
- 携帯電話の中継装置に関しては、眺望権(droit à la vue)は存在しないことが多くの判決で言及されていること。
当裁判所は、当事者の理由付けのより詳細な提示を後の記述に譲ることとする。
判 決 理 由
健康上のリスクについて
健康上のリスクについては、原告は以下のように主張している。
- 携帯電話と中継アンテナとは、同様の技術によって機能しているものの、根本的な差異が存在する。すなわち、携帯電話の使用によって、その通話時間、電波の放射場にさらされることは、使用者の選択に係る行為であるのに対し、中継アンテナの近隣住人がアンテナの放射場にさらされることは選択の結果ではなく、1日24時間、週7日間、恒常的に蒙ることである。
- 400以上の国際的な研究において、携帯電話の使用者及び中継アンテナの近隣住民の健康に対するリスクが明らかにされている。
- 多くの医師が、中継アンテナの近隣住民である彼らの患者の中に発生した病理に対して懸念を表明している。
- 被告の主張する文献は今日では時代遅れであり、誤りである。というのは、世界保健機関(WHO)の委託によるインターフォン研究(étude interphone)の初期段階での総括では、危険があるという結論であったことから、科学者の立場は公式見解レベルにおいても変化したからである。
- 今や、フランスの当局も予防原則(principe de précaution)の適用を推奨している。
- 保険会社は、電磁波による健康リスク、したがって中継アンテナや携帯電話による健康リスクをカバーすることを拒否している。
- 下院では、中継アンテナ設備を規制するための議員提出法案が何度も提出されている。
- 現在でも効力のあるフランスの法規範が現に遵守されているということは重要ではない。なぜなら、異常な近隣妨害に関する確立した判例によれば、異常な近隣妨害は法規範への違反に依存するものではないからである。
被告は次のように主張した。
- 本件訴訟は、いうところの健康リスクの存在に関する結論の先取りに帰着する。そのようなリスクの存在は科学的な研究によって常に否定されている。
- 原告らは、携帯電話に関する研究と、本件の対照である中継局に関する研究とを混同している。
- 電話技術と中継局の技術が同様であるという事実は、両装置の条件の違いから、これらから放出される電波エネルギーが全く比較にならない以上、全く意味のないものである。
- 基地局から受ける電波エネルギーは、近隣の局からのものであっても、携帯電話の利用の際に受けるエネルギーと比較して、後者の場合には利用者の頭部にアンテナが接近していることから、かなり弱いものである。
- 司法裁判所は、累次に渡り、本件の対象と同様のタイプの中継局が発射する電波は異常な近隣妨害には該当し得ないと判断している。
- トゥーロンの裁判所が2006年3月20日に採用した、仮定的なリスク(risque hypothétique)の存在を認める解決策は、唯一かつ未確定のものであるが、民事責任法のもっとも基本的な諸原則に反しており、法的に受け入れ可能な先例には該当し得ない。
このように、当事者は国内外の多くの答申、研究又は分析を引用するが、それらの解釈は少なくとも対照的である。裁判所が依拠しうるのは弁論に提出された文書だけであるが、それらによる結論として確実なことは、科学的な議論は依然開かれており、当事者に各自の視点を提示することを許すものであるということである。
それらから認めうるもう1つの結論は、ある者からは確認され、他の者からは疑われる健康障害が、損害(この損害と中継アンテナの近接性との関係はなお立証を要する)に該当するとしても、障害そのものからは区別される障害のリスクは確かなものであるということである。というのは、この問題に関して権限を有する国内外の当局が、予防原則の適用を推奨していることに争いはないからである。
この点、被告は本件において、リスクが存在しないことも、何らかの予防原則を遵守したことも立証していない。というのは、その立証としては不十分な2件の行政決定を提出したほかには、提出された文書のいかなるものも、本件設備に特に関わるものではないからである。
ところで、隣人をその意思に反して、防御方法として主張されているような仮定的なものではない、確実なリスクにさらすことは、それ自体近隣妨害に該当する。その異常性は、人の健康に関わるという事実に由来する。
このリスクが健康障害の顕在化によって具体化されることは、障害の重大さに応じて異なった法的な性質決定(qualification)の対象となる別個の障害に該当するだろうが、原告らは何らの病理も主張していないのであるから、これは本件の対象外である。
弁論に特別な文書が提出されていないことからすれば、本件においてリスクを除去することが可能なのは、設備の撤去による以外にない。原告らの蒙った損害は、1組当たり3,000ユーロの損害賠償によって補填される。
合理的な期間内における本件撤去の実効的な執行を確保するために、1日あたりの罰金強制及び仮執行が付される。
視界障害について
本件においては、原告らの弁論一件書類の中に、視界に関する原告らの損害を証明するものとしては、4葉の写真の質の悪い白黒コピー(原稿らの申立書に添付されていないが、当裁判所に提出はされたリストの文書41号)、及び2004年6月の町長による〔本件塔の建設〕工事の告示に対する異議申立に係る決定、とりわけ「一件書類に加えられた文書からは、近隣の風景の一体性について、及び住居や既存の植栽に対する影響について判断することはできない」という記載しか存在しない。
被告の強調するところによれば、原告らは「本件樹木が人工物であることに単なる通行人は気づかないかもしれないことを強調しているのであるから、このような一体化の努力を真に問題にしているわけではな」く、また、「原告らがその請求の根拠として提出する写真は、塔の擬装技術が優れていることを示している」のであり、「原告らは、樹木の形状をした塔が見えるということだけを以って異常な近隣妨害との性格づけが可能だと主張し、専ら結論先取りをこととしている」という。
実際のところ、複製の質の悪さ及び撮影アングルからは、本件設備を擬装する「樹木」の人工性を識別することはできないし、この樹木が風景(すぐ近接して、少なくとも2方向に同様の高さの樹木が存在する)の中で奇異な印象を与えることもない。
したがって、視界障害は明らかではなく、まして、異常性は認められない。この点に関する共同原告ラグージュ夫妻の請求は棄却される。
住宅の価値下落について
視界障害の不存在及び本件設備の撤去により、原告が主張する住宅の価値下落には根拠がない。
したがって、この点に関する原告らの請求は棄却される。
訴訟費用について
当裁判所は原告らの請求を一部ではあるが認容するので、被告には訴訟費用の支払いを命じる。
訴訟費用に含まれない費用について
さらに、訴訟費用には含まれないが主張された費用として、原告らに対して3,000ユーロを支払うことを命じるのが衡平に適うと思料される。
以上の理由により、
当裁判所は、
本判決の被告への送達日の翌日から起算して4ヶ月経過後より1日当たり100ユーロの罰金強制の下、本件送受信設備の撤去を被告に命じ、
健康リスクにさらされたことに対する損害賠償として、被告に対し、原告ら1組あたり3,000ユーロの支払いを命じ、
住宅の価値下落及び視界障害に関する原告らの請求を棄却し、
被告に訴訟費用の支払いを命じ、
民事訴訟法典第700条に基づき、原告らに対する3,000ユーロの支払を被告に命じ、
訴訟費用の点を除き、本判決の仮執行を命じる。
2008年9月18日、ナンテールにて判決。
書記官及び裁判官の署名(省略)
起案者名(省略)
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